『縁日』3

1 アレン(…はぁ、やっと口の中がすっきりした。
     やっぱりわさび抜きにすればよかったな。
     …でもさ、僕、別に悪くないもん!
     神田が悪いんじゃないか。

     どうしよ、家まで少しあるし、一人で勝手に帰ったら余計にこじれるし。
     しばらく一人で廻ってみようかな。
     マナと廻ったカーニバルとは全然違うから面白そうだし)

2 クロス「何だ、相変わらずシケた顔してるな、馬鹿弟子」
  アレン「……………!!!」
  クロス「どうした、久しぶりに会った恩師に挨拶もできんのか、手前は」
  アレン「し、し、し、し…!!」
  クロス「はっきり言え!」
  アレン「お、お久しぶりです!」
  クロス「(溜息)全然成長しとらんな、手前は」
  アレン「ど、ど、どうしていきなりこんな所にいるんです!!
      僕がいくら手紙を出しても全然返事くれなかった癖に!!」
  クロス「お前の戯れ言にいちいちつき合っていられるか。
      結婚したそうだな。亭主は?」
  アレン「え、あの…」

  クロス「ケンカ中で、悔しいから人混みの中で気を紛らわして、熱でも冷まそうって所か。
      一人で帰るのも、切ないし、淋しいし、心配するといけねぇし。
      フン…。全くお前ときたらしょうもない」
  アレン「…何で解るんですか…」
  クロス「手前の心の中なんざお見通しだ、馬鹿弟子。
      だから、成長の跡がねぇって言ってんだ、俺は。
      あれから少しはマシになったかと思えば…」
  アレン「マシですよ…神田がいてくれるから。
      それより……あの、あの…」
  クロス「結婚の報告にも行かない奴に何も言う事はねぇ。
      お前の方こそ、まだ向き合えんのか、あいつと」
  アレン「……………」
  クロス「まぁ、俺の知ったこっちゃねぇがな。
      俺は3年お前の面倒を見てやった。もう充分だろ」

  アレン「……。師匠は旅行で?」
  クロス「家を一件買った」
  アレン「買った!? 何処に!?」
  クロス「ここだ。お前の所に請求書が届いてねぇか?」
  アレン「……!!!! し、知りませんよ、そんなん!!」
  クロス「そうか。じゃ、明日をお楽しみって所だな」
  アレン「冗談じゃないですよ!! 師匠、裁判でまたしこたま儲けたんでしょ?
     悪徳弁護士!! それで何でただの学生に請求書回すんです!」

  クロス「…ただの、じゃねぇだろ」
  アレン「……………」
  クロス「まさか亭主にも打ち明けてないんじゃねぇだろうな」
  アレン「………あんなもの、僕のお金じゃありません」
  クロス「お前のだ。その為に戦ったんだうが」
  アレン「違います。僕はただマナと一緒に暮らしたかっただけです。
     たった、たったそれだけです! …それだけだったのに。
     僕は、僕は…。
      …だけど…もう…」
  クロス「こんな所でお前の履歴書を聞く気はねぇよ」

  アレン「……また、会えますか?」
  クロス「気が向いたら、な」

3 アレン「…ここにいたんですか、神田」
  神田 「遅かったな、待ちくたびれたぞ」
  アレン「神田を探してたんですよ。
      擦れ違ったんじゃないかって随分探しました。
      家にも電話したんですよ。
      …まさかずっとここにいたんですか?」
  神田 「まぁな。お前なら最後にここに来るだろうと
      思ってな」
  アレン「どうして?」
  神田 「寂しがりのお前なら、こんな時、 暗い所に行くだろうってな。
     もうここで駄目ならって…最後にとっとくだろうと思って」
  アレン「……。ひどいや」
  神田 「会えたからいいじゃねぇか」
  アレン「じゃなくて、どうして神田も僕の心が解ってしまうのかなって。
      それが悔しいんですよ」
  神田 「……神田、も?」
  アレン「いえ…あの、すいませんでした、僕…」
  神田 「会えたから、もういい。俺も大人げなかった」

  アレン「…ねぇ、神田、聞いていいんですか?」
  神田 「何だ」
  アレン「神田ってお金好きですか?」
  神田 「はぁ?」
  アレン「お金持ちになりたいですか?」
  神田 「興味ねぇな、と言いたい所だがないこともねぇ」
  アレン「…やっぱりそうですよね。
      ねぇ、もしもらえるなら、例えばですよ?
      今、いくら位欲しいですか?」
  神田 「1050円」
  アレン「……………はい?」
  神田 「二度も言わせんな」
  アレン「あの…たった?」
  神田 「たったじゃねぇよ。で、くれるのか、モヤシ?」
  アレン「え、まぁ、その位なら」
  神田 「じゃ、行くぞ」
  アレン「え、何処に?」
  神田 「うるせぇな。もう待ちくたびれてイライラしてんだ。行くぞ」
  アレン「は、はい」

4 神田 「おい、ケチんじゃねぇぞ。
      とびきり特大のを作れよ!」
  香具師「解ってるよ、旦那。
      かーいい彼女に食わしてやんだろ、心配すんな」
  アレン「か、神田、恥ずかしいですよ〜」
  神田 「うるせぇ、そこで待ってろ。
      あ、二人分の代金、お前出せよ」

5 神田 「ほら、お前が食いたがってた綿あめだ」
  アレン「…1050円て、これですか?」
  神田 「そうだ。最近は綿アメも高くなりやがったな。
      こんなもんに500円も取りやがる」

  アレン「アハハハハハハハ」
  神田 「何笑ってんだ、モヤシ」
  アレン「いえ……。神田、大好きですよ。すっごい好き。
      抱きついてキスしたい位。
      たった1050円なんて、僕、バカですね。
      こんなに幸せになれるのに、たったなんて…」
  神田 「何言ってるか、解らん」
  アレン「アハハハハ、すいません。アハハ」
  神田 「バカモヤシ。

      …冷えてきたな。そろそろ帰るか?」
  アレン「ええ。
      あの神田、手を繋いでいいですか?」
  神田 「バ、バカ! そんな事出来るか!」
  アレン「さっきあんな事して平気だった癖にー。
      いいじゃないですか。暗くて誰も見てませんよ。
      僕は見られたって平気ですけど」
  神田 「……うー」
  アレン「ギュッとして下さい。
      僕、神田となら、どんな暗いところに行っても平気です。
      あなたとなら道に迷わないと思うんです
      ずっとこの先も」
  神田 「…何かあったか?」
  アレン「なーにもないですよ。別に」

  神田 「……。
      ここでキスしたら、してやる」
  アレン「え、ここで?」
  神田 「綿アメで隠せば、人に見られないだろ」
  アレン「……………いいですよ。
      いつもより甘いですね、きっと」

エンド

「僕の背中には羽がある」補完編です。書かなかったアレンの過去。
これからじわじわと。

  

  
神アレ日記に戻る
  

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送