『父来る』



1 父如月がやってきた。
  父 「なんだ、アレンはいないのか?」
  神田「あんた何しに来たんだ?」
  父 「実物を見にきたに決まってるだろう」
  神田「ゾロゾロ来るんじゃねぇよ、ったく。
     時間も考えろよ、真夜中だぞ、今! 」
  父 「俺も会社で忙しいんだから仕方ないだろう」




2 父 「アレンを連れてメシ食いに来い」
  神田「母さんもそう言っていたから、その内連れて行くつもりだ」
  父 「いつになったら連れてくるんだ、もう1週間だぞ」
  神田「まだ1週間だろうが! 
     あんただけじゃなくて、 俺にも色々都合があるんだよ!
     学校も新学期に入ったばかりで忙しいしな。
     モヤシもレポートだ、部活だなんかで擦れ違いも多いし」
  父 「そんなんで大丈夫なのか」
  神田「学年が違うから仕方ねぇだろ? 
     出来るだけ昼休みとか、時間が取れたら会うようにはしてるが」
  父 「フン、心配だな!」
  神田「大声で言うなよ! これが普通なんだよ!学校の生活は!」
  父 「一緒に住めばいいじゃないか」
  神田「父親が同棲を勧めんのかよ、あんた。モヤシと俺が出会って、まだ1ヶ月……」
  父 「悪い虫を防ぐにはそれくらい考えろ。
     学校など、思春期のゴキブリの巣窟だ。
     退治するのが忙しくて気づいたら、横からかっさらわれていたなんてよくある話だ。
     早ければ早い程いいんだ、相手に告白するのは。後悔しても始まらん」
  神田「あんたの実体験かよ」
  父 「母さんは美人だったからな。学生時代は大変だった」
  神田「あんたと同じ顔じゃねぇか」
  父 「俺も大変だったんだ。色々 」
  神田「……………」
  父 「お前は違うのか?情けない」
  神田「うるせぇな! 他人に興味はねぇよ!」




3 父 「写真を見たがアレンって子、可愛いじゃないか。
     愛想つかされないようにしろよ。この色男め」
  神田「だから、あんた、同じ顔じゃねぇか。
     ところで、ヒカルをあんたんとこに預けて悪かったな。
     あいつ、どうしてる?」
  父 「元気だ。大体は、だがな。
     時々、溜息をついて外を見てるが、散歩に行く気はないようだ。
     食欲はある。昨日、ケーキ1ホール全部食った」
  神田「そうか。近所に誰か来てる様子はないか?」
  父 「毎夜、うちの前におかっぱ頭の美形だが、陰気な男がたたずんでる」
  神田「……………入れてやれよ」
  父 「何で俺が」

  神田「だって、アキラだろう、そいつ」
  父 「ヒカルがやればいいだろう。俺は知らん」
  神田「じゃ、ヒカルに教えてやればいいじゃねぇか」
  父 「ヒカルはぶっ叩いても、どついても起きない。
     熟睡出来るなら、まだ大丈夫だ。
     起きないなら、二人にはまだ縁がないんだ。放っておけ」
  神田「当人同士の問題か」
  父 「面倒臭ぇからな」
  神田「大会、大丈夫か、それで」
  父 「それこそ、俺達が口を挟む事ではない。
     他人の事より、お前だ。
     アレンに早く会わせろ」
  神田「うるせぇ。くどい。俺とアレンの事に口を挟むな。
     さっさと帰れ。俺も明日のレポートがあんだよ 」
  父 「遊びか本気か、自分の胸に聞けば解る事だ。
     ヒカル達も言うタイミングを逸して困っている」
  神田「……………」
  父 「お前も二の舞にならん事だな」


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