「ハロウィーン・パーティ」5

1、クロス(フン……結構うまく出来たじゃねぇか。
     これで準備は申し分ないな…。
     リハビリの課題としちゃ合格点か。

     あいつをいつまでも置いとけないと解っちゃいるが、
     柄にもなくズルズル引き延ばしてるな、俺は。

     ぬくもりとか、帰った時の家の灯火とか、
     色々やわらけぇもんが今更惜しくなった筈ねぇのにな。

     弁護士なんて仕事をやって、欲に駆られた連中の性根を
     イヤって程見て、人間なんてものに醒めちまった筈なのに、
     あいつはいつでもマジだからなぁ。
     駆け引きも遊びも許しちゃくれない。
     
     マジな野郎はどーも苦手だ。逃げ場をくれん)



2,アレン「……あ、師匠、帰って来てたんですか。

      あーーーー!! もう飲んでる!
      ダメですよ、師匠!!パーティ用のパンチなんですから!
      師匠が飲んじゃうと足りなくなります!」
  クロス「ほんの味見だ。もう少し酸味がキツクてもいいな」
  アレン「女性も飲めるように、甘みを足してるんですよ」



3,クロス「準備は終わったのか?」
  アレン「返事も確認しました。
      この家、結構大きいですけど、座る席が足りるかな。
      ダンスフロアのスペースを確保しなくちゃならなかったんで、
      人数分にはちょっと足り苦しくて」

4,クロス「パーティが始まっちまえば、また別の問題が見えてくるさ。
      その時、臨機応変に対応すりゃあいい。
      客は食事と飲み物がうまけりゃ、後は自分で何とかするだろうよ」
  アレン「はぁ、でも、僕、初めてだし、ちょっと心配です」
  クロス「ところで、お前自身の客は?」
  アレン「え?」
  クロス「この規模だ。お前の友人も多少呼んだところで困る事もあるまい。
      お前も知らない大人に囲まれてじゃ、つまらんだろう」

5,アレン「あ、ああ、いいですよ、別に。
      招待客は地元の名士ばっかりですもんね。
      呼んでも、気が引けるんじゃないかなー」
   クロス「……。お前、ホントは友達いねぇんだろ」
  アレン「え? いますよっ。行きつけのレストランのシェフとか、
      果物屋のおばちゃんとか」
  クロス「じゃなくて、同年代の友人だ」
  アレン「……。いません…」
  クロス「如才ないお前なら友達の一人や二人すぐだろう」
  アレン「だって、こんな高級住宅街じゃ通りで誰かに出逢うなんてないですよ。
      師匠とは今まで引っ越しばっかりでしょ?
      わがままな師匠と一緒だと世話だけで手一杯だし、  
      買い物以外で出逢うチャンスはないし、 あの家じゃ家庭教師でしたしね。
      この街に来て間がないから、 友達なんか作る暇は…」



6,クロス「作る気がなかっただけだろうが」
  アレン「そんな事ないですよ。
      僕だって、友達くらい欲しいです。
      師匠がいない時、いっつも一人だし」
  クロス「欲しいか?」
  アレン「え、ええ、勿論です」
  クロス「じゃ、学校行くか? 手続き位すぐしてやる」

  アレン「……………え?」
  クロス「俺の傍にいるより、いいだろう。
      わがままな俺様と一緒より勉強もはかどるだろうからな。
      ちょうど知り合いの学長も来る。紹介してやろう」
  アレン「師匠! 待って下さい! 僕はイヤです!」
  クロス「何で、だ?」
  アレン「だって…僕は師匠の元で修行がしたくて」
  クロス「バカ。俺を言い訳に使うな」
  アレン「そんな。言い訳なんか…!! 僕は本当に!!」
  クロス「客が来るぞ。とっとと着替えろ」
  アレン「師匠!!!」

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